2011年、場をつくることを由来にして「ツクルバ」という会社を共同創業した。日本全国に展開する会員制シェアオフィス事業「co-ba」を皮切りに、人が集まる機会と場所を提供する貸切型飲食事業「hacocoro」、中古リノベーション住宅の流通を促進する不動産のオンラインマーケット事業「cowcamo」を展開してきた。また、社内組織として「tsukuruba design」を設置し、オフィス・店舗・住宅などジャンルにとらわれない空間デザイン・プロデュース事業を行っている。創業から5期目の現在、ツクルバはグループ全体で、社員・アルバイト含め約100名弱の会社になった。
私が東京工業大学で建築を学び始めたのは2003年。ちょうどその年に六本木ヒルズが完成し、その後に続く大規模再開発プロジェクトが次々に東京の風景をダイナミックに変えていった。一方、再開発の逆サイドでは都心の物件の空室が問題になり、それを逆手に取って展開し始めていた「東京R不動産」や「ブルースタジオ」による鮮やかな実践に、ストック活用という文脈を超えた憧れを抱きつつ学生時代を過ごしていた。建築系の書籍からでは感じ取りにくい、肌で感じる変化の兆しがそこにはあったのである。
将来に悩んでいた頃、大学時代の恩師・塚本由晴氏から「枠組みをデザインすることを考えなさい」と助言をいただいた。この言葉は、今でも立ち戻る原点である。自分が目指したい枠組みのデザインには、どのような言語が必要なのだろうかと考えた。まずは不動産やビジネスの言語を学ぶために、不動産ディベロッパーに新卒で入社した。その後転職し、「箱」の内側をつくるためのグラフィックやデジタルコンテンツ、オペレーションのデザイン言語についてミュージアムデザイン業界で経験した。様々な業界の言語を習得するほど、より大きな枠組みをデザインできるようになっていく感覚があった。
「建築設計を超えて、建築的視点から事業を”設計”すること。」
ダイナミックな大規模再開発も、鮮やかなストック活用も、このような言葉に集約できるのかもしれない。枠組みのデザインを目指して様々な言語を習得しようと葛藤してきたことも、ここに繋がっていくように思う。
現在のツクルバは、空間設計はもちろん、事業プロデュース、広告クリエイティブ、不動産営業、メディア運営、編集、コミュニティマネジメント、イベントプランニング、飲食オペレーション、そしてエンジニアリングに至るまで、多様な職能のメンバーで構成され、これまでに”設計”してきた事業は、実空間だけでなく情報空間まで横断するものになってきている。結果、自分の肩書を何と表現したらいいのか悩ましいのだが、スタンスとしては建築家を目指していた学生時代から変わっていない。これからもより良い社会の構築のために、建築的視点からアクションを続けていくつもりである。世代を超えて長く愛され続ける建築をつくるように、未来を発明し続ける企業をつくってみたいと思っている。そして、ツクルバ自体が後輩たちのひとつの道標になったらこれ程嬉しいことはない。
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