建築家自邸シリーズ 001 内田祥哉邸
内田邸を見終わって

内田先生は構法の権威で、東大の名誉教授、お宅をお尋ねするにあたっては大変緊張させられた。温かいお人柄に接し多少の緊張はほぐされたが、それにしても構法の権威であることには変わりはない。やはり緊張しっぱなし。

しかし、だんだん話を伺っていると、同じく設計者としての先生には共通するものが見えてきて、失礼ながら親しみを覚えた。内田先生は自宅について「エスキスの思い出」という文を書いておられて、実際の敷地が決まる前に自分の家はこういうモノにしたいとの夢のエスキスをされているが、その中にはイームズやサーリネンから影響を受けたもの、堀口捨巳先生の八勝館を見て「風呂場には庭を」とりいれてみたり、ご自身の研究テーマを反映させたりしている。

自邸建設が具体的になってからも、RC造は予算の関係で放棄したり、当初の予算を減らすために「仕上げをしない」など、私たちもよく考えそうなことがあったりと、大先生でも、なんだか僕たちとよく似たことを考えるんだなー、と思ったりした。

それから、現地にお邪魔して印象に残ったことは、やはり先生は構法の先生なんだということ(実はデザインが大好きな先生だともわかったが)。住まいの写真のテーブルやお盆立てだけでなく、住まいの一部に作業場のようなところがあり、そこには工具や材料がずらりと吊るされ、今でも時々ここで作業をされている気配があった。また話の端々に、工業化の手法だけでなく、大工職、左官職などの伝統的職人技への敬意を感じることができた。やはり住宅にはそのような世界を無視することはできないものだろう。

泉幸甫

泉幸甫建築研究所所長

この投稿をシェアする:

コメントの投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA